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500名規模の開発組織をマネジメントする知見。世界展開を目指すSansan VPoE/VPoPの思考の裏側

企業 Sansan株式会社

公開日 2023年11月24日

カテゴリー インタビュー

「Sansanをグローバルテックカンパニーにする」

そう語るのは、Sansan株式会社で執行役員VPoE/VPoPを務める西場正浩さん。2021年7月に同社の研究開発部 副部長として入社してから、わずか半年でVPoEに就任という異例のスピードでの昇格。現在はVPoPを兼任しつつ、エンジニア組織の整備と強化を担っています。今回は西場さんがSansanで実践するマネジメントの事例とノウハウについて聞きました。

さらなる組織の拡大を目指すため“ボトムアップ”に変えていく

――このインタビューでは、西場さんが取り組んできた開発体制構築やマネジメントの事例について伺います。

抽象度が高いことから話すと「Sansanをボトムアップの組織にします」という宣言をしたことが挙げられます。もともと、Sansanはトップダウンの会社ではないのですが、ボトムアップな組織体制にするという方針を明確に掲げていたわけでもありませんでした。

――どのような意図のもと、西場さんはボトムアップの方針を選ばれたのでしょうか?

Sansanはグローバルテックカンパニーになることを目指しており、そのためには開発組織をさらに強化していく必要があります。技術本部には500名ほどのメンバーが所属していますが、今後はそれを1,000名や2,000名の規模にしていきたいですし、優秀な人材が数多く所属する組織にしたいです。その目標を実現するためには大前提として、マネジメントの強化が必須になります。

トップダウンよりもボトムアップの組織のほうがマネジメントを強化できますし、Sansanのカルチャーにも合っています。個々のメンバーがキャリアの早い段階から、組織や技術、事業などと向き合って意思決定をできる体制にしていくことが望ましいです。

とはいえ、「ボトムアップの体制にする」と言うのは簡単ですが、実現するのは難しいです。その体制を実現するために「仕事の裁量を部下に委譲しよう」と考えるマネジャーもいるかもしれませんが、裁量だけがあっても意思決定はできません。なぜかというと、情報が不足しているからです。

たとえば、あるプロダクトを開発・運用する組織が「人を増やそう」という意思決定をしたとします。けれど、実は経営陣がその事業を拡大しないことを決めており、その情報を社員に伝えていなかったのならば、意志決定がちぐはぐになるわけですよね。だからこそ、ボトムアップの組織作りでは情報をいかにオープンにするかを重視する必要があります。

他には、きちんと議論できる土台を作っていくこと。ボトムアップな体制を目指すためには、現場のメンバーからマネジャーなどの上長に対して提案できるようになることが重要です。そのためには、現場にいるメンバーが課題を発見し、言語化・議論し、それを提案という形で上に上げる能力が求められます。

だからこそ、課題発見や議論、提案のためのスキルの向上を、開発組織として支援しています。さらにマネジャーを登用する際にも、チームの成果や自分自身のマネジメント方針についての言語化能力の高さを重視しています。

単にソリューションを導入するのではなく、課題に着目する

――情報共有が重要という話がありましたが、西場さんの考えを詳しく教えてください。

情報共有には2段階あって、まず「その情報に社内の人たちがアクセスできる」という段階を経た後に「情報の内容や意図が適切に伝わっている」という段階になります。前者だけでは、メンバーは情報にアクセスできるものの内容や意図がうまく伝わっていない状態なので、後者の段階を目指す必要があります。

この際に知っておくべきこととして「情報伝達における平方根の法則」と呼ばれるものがあります。これは「N人に情報を伝えるためには、Nの平方根の数だけくり返し伝える必要がある」という法則です。

たとえば、私が直接的に技術本部に在籍するメンバー500人に情報を伝えるとすれば、その平方根である22回ほども伝えなければならないことになります。これだけの回数を全員に伝えるのはさすがに厳しいですよね。そこで、私はマネジャーや組織長に対して情報を伝え、彼らを経由してチームのメンバーに情報を伝えてもらう形をとっています。マネジャーや組織長は技術本部全体でも十数人なので、その平方根である4~5回ほど伝えればよいということです。

また、四半期に一度マネジャーからメンバーに対してのフィードバックを行っています。評価を付けたうえで、その評価になった理由をマネジャーはメンバーが納得できるように説明をしなければなりません。メンバーはマネジャーの説明に反論することもできます。たとえば、「私は○○という取り組みもしていますが、マネジャーはその活動を評価してくれていません」などと主張していいんですよ。これによって、マネジャーとメンバーの間で情報伝達の不足や認識齟齬があれば気付けるような体制にしています。

さらに、マネジャーや組織長が現場のメンバーに対してきちんと情報共有をしているかどうか、四半期に一度メンバーがアンケートに答える形でマネジャーへのフィードバック調査をしています。そのアンケートの一項目として「あなたのマネジャーは経営の情報をきちんと共有してくれますか」といった質問を設けています。

私はマネジャーからメンバーへの評価と、メンバーからマネジャーへのフィードバックにすべて目を通しています。その結果を見て「このマネジャーと1on1で話そう」とか「現場に入って状況を確認しよう」といった行動を起こしているんです。

――この記事を読んで「Sansanをまねて、自社の開発組織にもこの仕組みを導入しよう」と考える方もいると思うのですが、導入にあたってアドバイスはありますか?

注意してほしいのが、この事例で話したのはソリューションの話であって、課題の話ではないんですね。仕組みを取り入れる前に、まずは自社の組織の課題に注目したほうがいいです。私も決して最初からソリューションを持ち込もうとしたわけではなく、Sansanという会社にいろいろな課題がある中で、その課題をどうすればシステム思考的に解決できるかを考えて、このような仕組みを入れています。

そして、特定の施策だけをピックアップして導入するのではなく、すべての施策が組織の掲げている目標と連動するように制度設計しなければなりません。たとえばSansanではエンジニアを採用する場合、1次面接と2次面接を終えた後の最終面接は主に私が担当します。でも、私の判断で合否を出さないんです。

最終面接が終わったら、その候補者の採用に関わった人たち全員を集めて「私はこう考えましたが、みんなはどう思いますか?」とディスカッションします。Sansanで活躍してくれそうか、その候補者のキャリアにもプラスになりそうかを議論するんですよ。最終面接の結果を、私の意志だけで「この候補者を合格にしない」と決めてしまえば、それはトップダウンですからね。

つまり、Sansanの開発組織におけるすべての活動が、ボトムアップの思想や評価・育成の仕組みと連動しています。何かひとつのノウハウを取り入れたらうまくいくという簡単な話ではありません。組織課題を解決するための手法が世の中に数多くある中で、「Sansanならばどうするべきか」を総合的に考えて、組織に適用しています。

私のやっていることは、すべて本に書いてある

――こうした各種の手法を、西場さんはどのように習得されましたか?

前提として、私が取り入れている手法は自分自身でゼロから考えたわけではありません。私がやっていることの基本的な理念やスキルは、すべて書籍や論文などに書かれています。特定の一冊ではなく、複数の本に書かれていることを学んだうえで取り入れています。会社のメンバーからも「西場さんのおすすめの本を読んでみると、西場さんがやっていることがすべて書かれていますね」と言われることがあります。

私のマネジメントスタイルはワンパターンですし、基本に忠実です。それが、開発組織をスケールさせることにもつながります。なぜなら、私がやろうとしているマネジメントのスタイルを、本を読むだけでみんなが理解できるからです。

前述した評価制度の仕組みもGeneral Electric関連の書籍やGoogle re:Workなどを参考にして、それらを組み合わせています。なぜGeneral ElectricとGoogleなのかというと、前者は人事評価や人材育成の分野で世界トップレベルですし、Googleは私たちよりもはるかに大きな規模のIT企業で、かつ社内制度などを積極的に公開しています。また、先ほど述べた「課題に着目する」という概念も、多くの本に書かれています。

――西場さんのSNSなどでの情報発信を見ていると、自分自身や会社のビジョンを掲げるのがうまいです。これも、書籍などで学んだことを意識されていますか?

はい、これも本に書かれています。サイモン・シネックの『WHYから始めよ!』という本とか、デレク・シヴァーズの有名なTEDのスピーチである「社会運動はどうやって起こすか」で語られている内容などに沿ってやっているだけですね。

――企業の課題を発見するうえで工夫していることはありますか?

「部屋の中の象」と言われる概念がありますよね。これは「多くの人が気付いているけれど、誰も口には出したがらない課題」を指します。私は課題の発見が難しいと思ったことはなくて、部屋の中の象を「象いるじゃん!」と言っているだけなんです。本当は、組織の課題をみんな心の底ではわかっています。わかっているけれど解決が難しいから、課題として残っているんですよ。

読者へのアドバイスがあるとすれば、課題を可視化するために意識しなければならないのは目標を明確にすることですね。目標があるからこそ課題が発生すると思っています。冒頭で述べた通り、私はグローバルテックカンパニーを作ることや、プロダクトで顧客の課題を解決していくことを目指しています。それを実現するには、どう考えても今の組織の人数では足りないんです。

それを500人から1,000人、2,000人に増やしていこうとすると「採用ができていない」とか「マネジメント体制を強固にする必要がある」などの課題が見えてきます。「象いるじゃん!」ということですね。これらの課題を一つひとつ、重要なものから解決しているだけです。みんなが本当は課題に思っているものに対して飛び込んでいくことで、周りの人たちがすごく協力的になってくれます。

1on1の目的はあくまで「成果を最大化すること」

――1on1について工夫していることはありますか?

基本的に、一般的に良いとされているノウハウに沿った1on1を私はやっていないかもしれません。よく、ビジネス書などで「1on1では傾聴が重要」とか「相手の話したことをオウム返しするべき」などの知見が語られますが、そういったことをほとんどしないですね。1on1の手段ではなく本来の目的を達成するためにいろいろと工夫をしています。

1on1はあくまで、お互いの業務を円滑に進めて成果を最大化するための時間だと捉えています。たとえば、1on1の中でたまに「上司としての私にしてほしいことはありますか?」という質問をします。でも、初めて問い掛けた際には相手からなかなか答えが出てこないことが多いです。そこで「次回までに考えてきてください」と相手に促します。

そして次の1on1では、相手から「西場さんに○○をやってほしい」といろいろなパターンで言われます。主にWhatやHowについての相談が多いですが、それに対して「どうして、それをやってほしいと思いましたか?」というWhyについて聞きます。そうして課題を明確にして、共通認識を持ったうえで「あなたなら、どう解決しますか?」と質問していきます。

ここまで議論していると、相手の中で課題の深掘りや言語化が進んでいるわけです。すると「意外と自分でやれそうな気がしてきました」と言ってもらえるケースが多いです。つまり、自分自身でストレッチした目標を掲げようとしても難しいけれど、西場にやってほしいことならば思いつくわけです。そして1on1を通じた議論の中で、「西場にやってほしいこと」が「自分で取り組めそうなこと」に変わっていきます。このプロセスが、ボトムアップな組織を実現するうえでも重要です。1on1ではこうした工夫を入れています。

ただ、この際に「相手を成長させよう」とか「相手の視座を上げよう」といった邪(よこしま)な気持ちが入り込んではなりません。あくまで私は組織の成果を最大化するために1on1をやっていますし、私がやるべきことや現場のことを純粋に知りたいんです。私は現場で働いているわけではないので、現場で起きている課題はメンバーのほうが詳しいです。その情報を把握するために「私にやってほしいことありますか?」と問い掛けています。

自分の経営者としての責任を果たすために質問をしているのであって、メンバーを成長させるためにやっているわけではありません。どうすれば開発組織の成果を最大化できるかを考えています。組織の課題についてヒアリングして、場合によってはディスカッションする。そして課題が明確になったら、解くべきかどうかを判断して、解くと決めたらソリューションを議論する場が1on1だと思っています。

先人たちの知恵を学んで、巨人の肩に乗ればいい

――「Sansanをグローバルテックカンパニーにする」という言葉がありましたが、どのような状態になれば、グローバルテックカンパニーが実現できていると言えますか?

これはあくまで私の考えですが、Amazonという会社とそのプロダクトは世界中で同じようにAmazonとして存在しているじゃないですか。Uber Eatsも世界中でUber Eatsだし、Shopifyも世界中でShopifyですよね。つまり、企業の名前が世界中で知られていて、そのプロダクトが各地で使われています。そして、企業やプロダクトの素晴らしさや文化・思想が世界中の人たちに伝わっています。

Sansanという会社は日本のビジネスパーソンには一定以上の認知を獲得できています。これを、日本以外の国でも同じように知ってもらえるようにしたいです。Sansanは「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げていますが、まさにこの状態ですよね。そして、Sansanのプロダクトを通じて「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションを実現したいです。

私の個人的な目標としては、Sansanを優秀な人材を輩出する会社にしたいと思っています。Sansanがグローバルテックカンパニーになれば、この会社で育った人たちがいつか転職や起業をして、世界の各地に散らばるわけですよね。Sansanで培ったスキルを使って、新たな場所で組織を大きくしたり、良いプロダクトを作ったりという事例が生まれたら、それは「出会いからイノベーションを生み出す」にもつながりますし、すてきなことだなと思います。

――最後に伺いたいのですが、「what we use」で掲載するインタビューやコラムは「開発組織における意思決定」をテーマにしています。エンジニアがこういった事例を学ぶことには、どのような意義があると思われますか?

私は本や文献をたくさん読んで、先人たちの事例をマネジメントに適用してきました。前提として、巨人の肩に乗ることはとても重要だと思っています。

エンジニアがシステム開発に取り組む際には、OSSを使ったり、各種のベストプラクティスを活用したりしています。ゼロからすべてを作るのではなく、先人たちの生み出してきた知恵に乗っかって新しい価値を生み出すことを、エンジニアは自然とやっているはずです。

同じことが組織マネジメントでもできるはずだと考えて、私はそれを実践しています。

取材・執筆:中薗昴

撮影:山辺恵美子

提供:株式会社Haul

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