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フルスクラッチだけではなくローコード開発も駆使。AI Agentic IDE利用も見据える。なぜPayPayの社内システム開発はスピードと品質を両立できるのか?

企業 PayPay株式会社

公開日 2025年08月18日

カテゴリー インタビュー

キャッシュレス決済サービス「PayPay」は、いまや「生活に欠かせないインフラ」と言えるほどに普及しています。その成長を支える重要な組織の一つが、社内向けの業務系システムの開発・運用を担うSystem Development部です。

「金融系システムの開発」というと、レガシーな技術を用い、開発スピードが遅いイメージを持つ読者も多いかもしれません。しかし、System Development部ではローコードツールなどのモダンな技術も積極的に採用しており、時には数週間という短期スパンで新システムをリリースすることもあります。また、今後はAI Agentic IDEの活用も視野に入れています。System Development部 部長の藤田文彰さんに、開発方針や組織の取り組み、今後の展望を伺いました。

参考記事:生成AIやデータ分析も取り入れた内製開発の魅力。PayPayの事業成長を支える社内業務システム

「内製開発」に徹底的にこだわる

――System Development部の役割や業務内容について教えてください。

私たちは、「PayPay」の事業を運営するうえで必要な業務システムの開発・運用を担う部署です。たとえば、マーケティングや営業、顧客対応といった社内業務を遂行するために必要なシステムを作っています。

金融領域で事業を展開するうえで欠かせない、審査機能の構築も私たちの担当です。法人向けの審査に加え、ユーザーのeKYC(オンライン上での本人確認)システム、サービス利用中の途上審査、不正取引のチェックなどの仕組みを開発・運用しています。

――金融系のシステム開発では、社内システムを外部委託するケースもありますが、内製での開発・運用を行う意図は何でしょうか?

いくつか理由があります。まず、外部業者に委託する場合、プロジェクトの初期フェーズで要件を確定させる必要があるため、後からの仕様変更が難しくなってしまいます。PayPayの事業では、数カ月ほどでサービス企画や仕様が変わることも珍しくありません。柔軟なシステム開発が求められるため、外部委託では対応が難しいです。

もう一つの理由は、事業運営に直結するシステムだからこそ、トラブル発生時に迅速な対応が求められる点です。開発を外部業者に任せすぎると、緊急時の即時対応が難しくなるだけでなく、システムがブラックボックス化して、自分たちで対応できなくなるリスクがあります。こうした理由から、私たちは内製化を推進しています。

大切なのは「事業価値の創出」。それに適した技術を採用する

――System Development部が、技術選定において重視していることは何でしょうか?

私たちは技術を「事業価値を生み出すための手段」として捉えています。そのため、基本的には開発・運用のしやすさを重視し、チームメンバーにとって扱いやすく、実績のある技術を選定しています。一方で、特定技術を導入することでより大きな価値を創出できると判断した場合には、新しいものも積極的に採用しています。

――具体的には、どのような技術を用いていますか?

前提として、私たちの部署ではスクラッチ開発とローコードツールによる開発という2つのアプローチを取っています。そして、スクラッチ開発では、メインの言語としてJava、フレームワークにはSpring Bootを使用しています。インフラはAWSで、コンテナ技術を活用しておりAmazon ECS上でシステムを運用しているのが特徴です。また、AI関連技術としてAmazon SageMakerも導入しています。マネージドサービスを用いることで運用コストを抑えつつ、システム開発の速度向上や品質改善に注力しています。 

一方、ローコードツールによる開発では、「OutSystems」というプラットフォームを使用しています。「OutSystems」はドラッグ&ドロップでUIを構築できるほか、エンタープライズ向けシステムに必要なセキュリティ機能やAPI連携機能なども備えています。

スクラッチ開発とローコード開発は、主に用途に応じて使い分けています。社員向けのツールでは、ローコード開発を選択することが多いです。ローコードでアプリのデータモデルと画面を構築したうえで、社内のニーズやユースケースに合わせてカスタマイズしています。一方、スクラッチ開発は大規模かつ複雑性の高いシステムに適用しています。

また、開発の効率化を目的に、生成AIの利用も進めています。各プロジェクトでGitHub Copilotを導入し、コード補完やリファクタリングの自動化によって開発スピードを向上させています。さらに、AIエージェントのClineも社内で一部利用が認められており、今後さらに活用を進める予定です。ただし、金融領域での開発であるため、やみくもに導入を進めるのではなく、セキュリティやプライバシーとのバランスもかなり重視して方針を検討しています。

必要最小限の機能を見極め、場合によっては“作らない”選択を

――開発において大事にしている指針はありますか?

開発の優先度を明確にし、必要な部分から段階的にシステムを成長させることです。たとえば、新しい取り組みを始める際に、最初から100点満点のシステムを目指し、業務フローも抜本的に変えようとすると、完了までにかなりの時間がかかります。まずは、システムが30点程度の状態でも、プロセスが回るならば十分だと考えています。そこから段階的にシステムを作り込み、100点にしていくイメージですね。

これは、スピードと品質を両立するための戦略です。真の意味でシステム化が必要な箇所と、そうでない箇所を見極め、最小限の機能からスタートして段階的に開発を進めています。

――具体的に、これまでのプロジェクトでどのような事例がありましたか?

この考え方に沿ったプロジェクトとして、2024年に行った寄付・お賽銭の事例をご紹介します。もともと私たちは「PayPay」を通じて、「商品やサービスの対価としてお金を支払う」「個人間で送金する」といった機能を提供していました。そこからさらに、「寄付などのための送金機能を設ける」という構想が立ち上がりました。

このプロジェクトでは、金融に関する各種法令を遵守しながら開発を進める必要がありました。加えて、既存の仕組みよりも厳格な審査プロセスの設計が求められました。資金洗浄や詐欺といった不正な取引に悪用されるリスクがあるためです。しかし、すべての要件を一度に実現しようとすると、大掛かりなプロジェクトになり、スピードが落ちてしまいます。

こうした構想が進む中で、本サービスの利用を予定されていた最初のお客さまから、利用スケジュールについてのご相談がありました。そのスケジュールに間に合わせるために、サービスインのために最低限必要な機能を定義し、それ以外の部分は既存の仕組みを流用するとか手作業で補うという方針を取りました。

具体的には、このプロジェクトでは個人情報や機密情報を扱うため、セキュアな環境で書類を扱うことが必須でした。これを、既存のシステムの仕組みを活用し、運転免許証やマイナンバーカードの画像をストレージに保存することで、開発工数を抑えたのです。その結果、予定通りのスケジュールでサービス稼働を間に合わせ、PayPayから募金を行えるようになりました。

もう一つ、類似した事例として過去に取り組んだ自治体のキャンペーンがあります。このプロジェクトでは、「特定の県に住む人・働いている人」を対象としており、住民票や就労証明書を提出してもらう必要がありました。しかし、これまで「PayPay」には、こうした書類を受け取る仕組みがありませんでした。加えて、施策を実行するにあたっては設計や実装を2週間程度で終わらせる必要がありました。

このプロジェクトには、大きく分けて「県内在住・勤務者から書類を受け取る」「書類を審査し、ストレージに格納する」「条件に合致する人を対象にキャンペーンの抽選を行う」という3つの処理が必要でした。すべてをシステム化すると2週間では間に合わないため、一度きりの処理は手作業でカバーし、何度もくり返し処理する部分のみを優先的にシステム化する方針を採用したのです。このプロジェクトでは、テックリードのメンバーを中心に、少数精鋭でシステム構築を進め、予定通り約2週間で開発を完了しました。

証明書アップロードから抽選、本人確認書類の審査、抽選結果通知までの業務フロー

――いずれのプロジェクトも、かなりのスピード感ですね。

そうですね。かつ、スピードがあるだけではダメで、金融系サービスである以上はセキュリティやプライバシーの担保も欠かせません。そのバランスを常に考えながら開発を進めているのが、私たちの部署の特徴です。

これまでの常識にとらわれず、積極的に越境してほしい

――今後、System Development部として特に注力したいことはありますか?

圧倒的な生産性向上です。前回、システム本部長 兼 システム本部 AI活用推進室長の岡田が出演したインタビュー記事でも解説していましたが、私たちは生成AIに注目しており、開発プロセスに取り組むことに積極的です。2025年度は、生成AIの活用を前提としてプロジェクトを推進したいです。

余談ですが、生成AIの普及に伴い、エンジニアの役割もこれまでの「製造する」フェーズから「創造する」フェーズへと進化していると感じています。過去のやり方に固執せず、世の中の変化に適応しながら働く意識が重要だと考えています。

――他の金融系サービスの企業と比較して、System Development部だからこそ得られる経験はありますか?

まず、「PayPay」自体の事業成長のスピードですね。2018年にサービスを開始してから、現在はユーザー数7,000万人(2025年7月時点)を突破しています。これほどの速さで成長を続けている事業は、なかなかありません。

また、System Development部では、ビジネスプロセス全体を俯瞰しながら開発を進めています。ビジネスの変化を最前線で体感しつつ、システムを開発・運用する経験を積めます。

一般的に、金融系の企業は新技術の導入に慎重な姿勢を取ることが多いですが、PayPayでは柔軟にチャレンジできる環境が整っています。新しい技術に挑戦できる環境を求める方にとっては、非常に魅力的な職場だと思います。

――どのようなマインドの方が、System Development部にマッチするでしょうか?

「今まで当たり前だったことを、当たり前だと思わない」という姿勢を求めています。要するに、これまでの慣習や成功体験にとらわれず、新しい領域に果敢に挑戦できる方。そのほうが、入社後に大きく成長し、パフォーマンスを発揮できると考えています。

また、「自分の技術を過信しない」ことも重要です。自分の持っている知識やスキルが、今後も必ず正しいとは限りません。次々と新しい技術が登場するなかで、それらをどのように活用し、価値を生み出せるかを考えられる人であってほしいです。

――最後に、読者へメッセージをお願いします。

「PayPay」を盛り上げる気持ちを持つことに加えて、常にチャレンジする姿勢を大切にする方であればPayPayで活躍できると思います。また、メンバーには「私はエンジニアだからシステム開発以外はやらない」と考えるのではなく、積極的に領域を越境してほしいです。既存の役割だけに縛られてしまうと、将来的なキャリアの可能性が限定されてしまいます。新しいことに挑戦したいと思ったら、どんどん声を上げていくような積極性を持つ方と、ぜひ一緒に働きたいです。

取材・執筆:中薗昴

撮影:山辺恵美子

提供:株式会社Haul

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2018年にサービスを開始してからユーザー数7,000万人(2025年7月時点)を突破したフィンテック企業であるPayPayは現在約50か国以上の国と地域から集まった多様なメンバーで構成されています。...

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